ロケットストーブ燃焼実験

長い薪や剪定枝を燃やせる耐火セメント(耐火キャスタブル)を使ったロケットストーブ。燃焼実験や改善を繰り返して実用的なストーブになってきました。その様子を紹介します。

1 燃焼開始の仕方
燃焼開始

図1 燃焼開始

① 最初に前面扉を開けて、ヒートライザーの真下付近で紙などの燃えやすい物と良く乾いた細い薪を燃やします。

② 火が付いたら薪投入口の真下まで細い薪を追加して扉を閉め、薪投入口からは長い薪を投入しておきます。

③ ヒートライザーが暖まるにつれて上昇気流が強くなってきます。炎も次第に手前に移動してきて長い薪に火が付き、問題が無ければ燃焼し続けます。


2 燃焼実験1
燃焼実験1

図2 燃焼実験1

ロケットストーブ製作直後の燃焼の様子を図2に示します。焚き口の下には灰落としと吸気目的の穴が開いておりロストルを置いてあります。

この状態では薪投入口から炎と煙が立ち上ってしまいました。薪投入口からの吸気の勢いが弱いことが原因と考え、次のように変更することにしました。


3 燃焼実験2
燃焼実験2

図3 燃焼実験2

図3に示すように、下の吸気口を鉄の角パイプでふさぎました。その結果、薪投入口からの吸気が強くなり、炎と煙が下に引かれるようになりました。この時、ヒートライザーの力を実感することができました。

しかし、薪の状態によって(より燃えやすい物などで)は、炎と煙が立ち上ってしまうことがあります。そこで、薪投入口のサイズをより狭くするように考えました。


4 燃焼実験3
燃焼実験3

図4 燃焼実験3

図4に示すように薄鉄板製の箱枠を作って薪投入口に差し込み、幅を狭くしてみました。これで大抵の薪は煙も立ち上ることなく燃焼できるようになりました。

以上の実験でわかったことは、ヒートライザーの能力により 上昇気流=吸気気流 の強さが決まること。そして、薪投入口(吸気口)の大きさはそれに見合ったものにしなければならないということです。

薪の状態によっては燃えにくいことがあります。その時には箱枠を外して燃焼実験2の状態に戻すようにしています。ただし、長時間そのままにすると危険です。

5 焚き口下の穴をふさぐ

灰のかき出しと吸気のために焚き口の下に穴を設けロストルを置いてありました。しかし、この穴があると下からも少し吸気が入るため、その分薪投入口からの吸気が弱くなってしまいます。また、灰がロストルの下に落ちるのは良いのですが熾きも下に落ちてしまい、燃焼の効率も下がるような気がしました。
結局、この穴をふさぐことにしました。耐火キャスタブルの煉瓦の残りがありましたので、穴のサイズに合わせて切断しはめ込みました。

6 前面ガラスが汚れる問題の解決
燃焼実験4

図5 現在の状態

未燃焼ガスが前面扉の耐火ガラスに付きガラスが黒く汚れてしまう問題が生じました。短くなった薪がガラスの方に倒れ込んだときは特にひどくなります。

対策の一つ目は燃焼場所とガラスとの距離を長くすることです。耐火キャスタブルの焚き口ブロックの向きを逆にすれば、薪投入口がヒートライザ側に5cm移動するようにしてありましたが、現段階では作り直すのが面倒です。そこで、φ10程度の鉄棒で簡単な枠を製作してガラスとの間に立て、薪がガラス側に極力倒れ込まないようにしました。この枠は製作のページの燃焼写真で見ることができます。

対策の二つ目は、前面扉付近から少し吸気させることです。これは一般の薪ストーブでも用いられているようです。とりあえず前面扉を数mm程度開けることにしました。

以上の対策で、ガラスの汚れの問題は完璧とは言えませんが格段に改善しました。

7 薪投入口から炎が立ち上る問題 その2

前面扉を開け放しにすると薪投入口が煙突状態になり、見事に炎と煙が立ち上ります。気が付かずに部屋に設置してある火災報知器が反応し、一度は家族中が大騒ぎになってしまいました。二度目からは火災報知器が鳴ると私が直ぐに疑われています。うっかりミスで前面扉を締め忘れるのが一番怖いです。

人に自慢してロケットストーブを見せることがありますが、その時には前面扉を開けて薪投入口から煙が立ち上るのを見せてから、扉を閉めて煙が吸い込まれるのを見せてロケットストーブ(ヒートライザー)の原理を説明しています。

その他、筒状の物を燃やすとその筒が煙突になってしまい煙が立ち込めます。同様に竹を燃やすときにも気を付ける必要があります。竹の状態によっては半分に割って燃やすようにしています。これで竹が爆ぜるのも防げます。

8 炎が立ち消える問題の解決

ロケットストーブでは立てて入れた薪によっては炎が立ち消えてしまうことがあります。硬く太いしっかりした薪ほど消えやすいです。一般のストーブでは燃焼の炎が燃えていく部分を加熱しますので燃焼がスムーズに進みますが、ロケットストーブでは薪の上から冷えた空気が強く吸い込まれるので、吹き消される状態になってしまいます。

燃えにくい薪を入れるときには、燃えやすい薪を一緒に入れるようにすれば解決します。製作のページで紹介した徒長枝や竹は燃えやすいので、太い丸太などを燃やすときには一緒に入れています。

9 竹は最高
竹1

竹の燃焼

竹2

メラメラと良く燃えています


竹は長く一直線でこのストーブの燃料として適した形をしています。乾いていれば竹1本だけでも良く燃えて火力も結構強いのですばらしい燃料となります。しかし、竹は割れていないと破裂するので十分気を付ける必要があります。私は屋外に数年放置され割れが入ったものを乾燥させて使っています。昔は日本人の生活に必要であった竹が今では迷惑な代物になっています。そんな竹の有効活用ができます。

10 実用的なロケットストーブに

製作した直後から現在までいろいろと試行錯誤してやっと実用的なロケットストーブになってきました。状態が良ければ1時間以上、何もしなくても燃え続けます。すきま風も入る冬の「ものづくり作業場」にとって無くてはならない存在になりました。

燃焼開始時以外は煙突から煙はほとんど出ないので完全燃焼している証拠だと思います。低く簡単な煙突ですが、外の強風が原因で煙が逆流することはほとんどありません。

薪が投入口で引っ掛って下がらず、火が消えそうになっていることもあります。まだまだ改良の余地はあります。

次に作る機会があったら、木株などの太く大きい薪をとろとろと燃やせるようなロケットストーブや、ロケットストーブ式ボイラーなどを作ってみたいと思っています。


ロケットストーブ製作