ロケットストーブ自作

長い薪や剪定枝をそのまま立てて燃やす 耐火セメント(耐火キャスタブル)を使ったロケットストーブを自作

伝兵衛農園では冬場の果樹園から剪定枝が山ほど出ます。剪定枝はほとんどを山積みにして燃やしてしまいます。その反面で冬の暖房は化石燃料を使っているといった有様です。何とか薪ストーブを作り剪定枝を燃料として使いたいと考えてきました。

一斗缶で作ったロケットストーブを見たのがロケットストーブとの出会いでした。説明では
① 環境にやさしい薪を燃料としたストーブである
② 少ない燃料で強い火力を得られる
③ 完全燃焼で煙がほとんど出ない
などの特徴があるとのこと。ネットで検索してみるといろいろな手作りロケットストーブの投稿があり、やる気が高まってきました。

伝兵衛農園から出る剪定枝には2m位の長い徒長枝が沢山あります。また、今では嫌われる竹藪も近くにあり、乾燥させれば竹を長いままで燃料にできます。これらをJ型の燃焼室の焚き口に立て、長時間燃やし続けられるようにしてみたいと考えました。
仕事を定年退職したのを機に念願のロケットストーブづくりを始めました。

徒長枝

果樹園から大量に出る長い徒長枝

基本方針
① 長期にわたり使えるように作る。地震等で倒れても簡単には壊れないようにしたい
② ヒートライザーは耐火セメント(耐熱キャスタブル)を使って作る
③ 外枠は鉄板を溶接して作る
④ 長い燃料(薪)をそのまま立てて燃焼させられるようにする
⑤ 煙突は一般的なハゼ折り煙突を使う
⑥ よくわからない点を試行錯誤できるようにする
⑦ 設置場所は作業場のコンクリート土間とし燃焼実験を重ねていく

参考にさせていただいたサイト
いろいろなサイトを見させていただきましたが、実際に作るにあたり、特に次の YouTube動画 がすばらしいと思い大いに参考にさせて頂きました。
◆ 参考にさせて頂いた「ロケットストーブ制作過程」動画

設計図
最初はラフな図で製作開始。この図は完成後に書いたものです。
ロケットストーブ 設計図

制作過程
2013年11月 設計・制作開始
2014年1月 一応完成・燃焼開始
それぞれの部品を作っている最中は頭の中が一杯で、写真を撮る余裕なし!。一通り部品が完成し組立段階になってやっと写真を撮る余裕ができてきました。

1.ヒートライザーと焚き口

ヒートライザーと焚き口

耐火キャスタブルを型に流し込んで作りました。左奥にヒートライザーの型枠が見えます。中心の丸穴は参考にした動画と同じφ130のボイド管で作り、四角い穴はコンパネの型枠で作りました。(これを見たかみさん「誰の墓石?」、私「俺の墓石にでもしてくれ!」)
当初、灰を落としたり空気の吸入口にしたいと考えたため、焚き口の底に四角い穴を開けました。その上には鉄格子(ロストル)を作って乗せました。(現在はこの穴を塞いであります)

外側の型枠を外してから1週間程乾燥させました。冬場でしたので夜中は石油ストーブ・電気ストーブ総動員で温度をかけました。(結構化石エネルギーを使いました)
ススで黒くなっているのは、ヒートライザーと焚き口を突き合わせて燃焼テストを行ったためです。ここでヒートライザーが機能することを確かめました。ヒートライザーなどの中に残っていたボイド管や型枠はこの燃焼テストでそのまま燃やしました。

使用した耐火キャスタブル
◆ヒートライザー ・・・ アサヒライトキャスター LC-10S(軽量タイプ) 20kg入×2袋
最高温度 1200(℃) 熱伝導率 0.21(W/mK) 曲強さ 0.5(MPa) 施工所要量 0.8(t/m3) 内部をより高温に保つために熱伝導率の小さいものを選んだ
◆焚き口・・・ アサヒキャスター CA-13S 25kg入×1袋
最高温度 1450(℃) 熱伝導率 1.2(W/mK) 曲強さ 5(MPa) 施工所要量 2.05(t/m3) 大きな穴が開くため強度の大きなものを選んだ
LC-10Sは軽石のよう。軽く柔らかくて割とねばりがある感じ(あまり適切な表現ではない。表現が難しい)。
CA-13Sの方はコンクリートのように固い。LC-10Sより熱膨張のストレスに弱い感じで、本格燃焼中の現在は亀裂が走っている。

2.台座部

台座部
台座部2
脚部はC鋼(75×45mm)を組み、その上に鉄板(t3.2)を敷く。相互の接続はネジにて。
他のパーツも含めて鉄材は全て耐熱スプレー塗料で塗装しました。
◆耐熱塗料は オキツモ ワンタッチスプレー A650-BK つや消し黒 耐熱温度650℃

耐火キャスタブル(LC-10S)の余りで煉瓦を作り灰受けとして下に敷く。LC-10Sの煉瓦はハンドグラインダで切断したり削ったりしてサイズを合わせました。埃は出ますが簡単に加工できました。

3.ヒートライザー組立と本体カバー

ヒートライザー組立て

本体カバー

本体カバー裏側

本体カバー裏側の煙突口

鉄アングルで作った枠でヒートライザーを台座にボルト固定。すき間はセラミックマットで埋めています。右はヒートライザーを覆う本体カバーで天板に当たった熱風が下方向へ折り返します。カバーは t1.6mmの鉄板とt3.2mmの縞板で、切断と折曲げを業者に依頼し自分で箱型に溶接。煙突穴や台座の角穴も業者に依頼。
◆煙突口はホンマ製作所HTC-50TX用を使用。
◆セラミックマットは12.5mm厚の綿状のもの。耐熱温度は不明(最低でも700℃か)

4.カバーと焚き口ブロックの組立

焚き口ブロック組立て

本体カバーをネジ固定。焚き口ブロック周囲のすき間をセラミックマットで埋めました。手前は焚き口カバーで、本体カバーと同様にt1.6mmの鉄板を業者に切断折り曲げを依頼し、自分で箱形に溶接して作成。

5.焚き口カバー組立

焚き口カバー組立

6.ガラス扉組立・取付

ガラス扉ガラス扉取り付け
アングルで作った入れ子枠に耐熱ガラスをはさみ込みネジ固定。すき間にはセラミックマットを詰めました。本体には長尺ボルトを軸にして組み付け。取っ手は後で作ることに。
◆耐熱ガラスは ホンマ製作所 正面ガラス MS-605 / MS-605TX(t4×W295xH185mm 700℃)を使用(奮発しました)

7.煙突取り付け

煙突取付
一般的な120mmのハゼ折り煙突で、屋外の立ち上げは約2m位。

8.試し焚き

試し炊き
長い剪定枝を燃やしてみました。この写真ではわかりませんが早速いくつかの課題が見えてきました。これからいろいろと燃焼実験をしながら手直しなどの試行錯誤を繰り返していくことになります。

9.その後 2015年1月現在

埃まみれになった以外はほとんど変わっていないように見えます。しかし、ロケットストーブの欠点や作り方の問題点などが分かり、対策を取って安定した燃焼ができるようになりました。焚き物の投入の仕方に慣れが必要ですが、状態が良ければ1時間程度は何もしなくても燃焼し続けてくれます。冬の作業場には欠かせない存在になりました。
これから直したい部分もあり、まだまだ楽しめそうです。

ロケットストーブ
ロケットストーブ

設計図前後

上図の左は製作当初、右は現在の燃焼室の状態を表しています。
① 灰のかき出しと吸気のための下の穴は塞ぎました。
② 薪投入口(吸気口を兼ねる)の幅を狭めるため鉄板を加工して入れました。この部分は外すこともできます。
③ 前面のガラス扉付近へ焚き物が倒れ込まないように鉄枠を置くようにしました。また、ガラス扉は完全に閉じないよう、少しすき間を開けて燃焼させるようにしています。ただし、大きく開けると大変危険な状態になります。

これらの詳しい説明は ロケットストーブ燃焼実験 のページをご覧下さい