猿検知器の製作と追い払い 概要

山沿いにある仲間の果樹農家さんと協力して、猿検知と猿追い払いのための警報装置を作ることにしました。2~3ヶ月ほど掛かりましたが、現在は問題点も中ら解消され猿の検知が安定してできるようになりました。
その後、爆音機の自動動作やバッテリーのソーラー充電を追加しています。

猿検知全体2

猿検知器 設置完了(最初の状態)

<経過>
・装置の検討        平成27(2015)年~
・センサー子機・親機の製作 平成28(2016)年5月
・現場へ設置・改良・調整  平成28(2016)年6月~7月
・追払用爆音器の自動動作  平成28(2016)年8月
・ソーラー充電を追加    平成28(2016)年8月末

<製作・設置費用>
計算中です。

1.被害農家さんの実態と要望

装置を作るにあたりまずは実態を掴むところから始めました。あまり難しい要望だと私の手には負えませんし・・・。

猿被害園

猿の被害のあるリンゴ畑

➀ 山と隣接するりんご畑が毎年猿の群れに入られ、リンゴの木が丸ごと食べられてしまう。実が青く小さくても品種によって猿は食べる。

➁ 畑に人が居ないときを見て猿が出てくる。朝方や夕方が多い。雨天の日は人が居ないと見て出てくることが多い。

➂ 今まで農作業の合間や雨の日に見張っていて、猿が出てきたら花火などで追い払ってきた。他の農作業もあるので四六時中見張っていることは出来ず、結局毎年被害に遭ってきた。

➃ 猿を検知して大きな音で知らせてくれるだけで対応が取れる。直ぐに人が行って花火などで追い払えばよい。猿を自動で追い払えればよいがそう甘くはない。自動で追い払う装置は次の段階で良い。

➄ 花火は地域の煙火(花火)屋さんが猿追い用に特別に開発したものを打っている。この花火は講習会を受講しないと売ってくれない。現在、花火の費用は自治体などからの補助がある。近所の住民の方々にも協力頂き、猿が出たときに一緒に花火を打ってもらっている。

➄ 猿が出てくるルートはある程度限られるので、検知器はむやみに沢山設置しなくても良い。とは言ってもある程度の数は必要となる。

➅ 自動で追い払う装置として爆音機があるが、数分間隔で鳴らせている状態では猿は慣れてしまいほとんど効果が無い。普段は鳴らなくて猿が出てきたときだけバンバン鳴らすことができれば効果があるかもしれない。

➆ 猿検知 & 追払い機 の販売はあるがまだ高価で簡単に出せる金額では無い。掛けられる費用は数万円程度までである。

2.製作する装置の検討

被害農家さんのお話をお聞きして自分の力でもできそうな感じがしてきました。次のように装置の方針を立てました。

➀ 猿検知には人感センサーとして一般的な焦電型赤外線センサーを使う。秋月電子通商で安価なセンサーが販売されているのでまずはこれを使ってみる。使用場所が屋外で過酷な環境であることから多くの不安要素があるが、まずは試してみたい。

➁ センサーは小型の屋外用防水ボックスに入れ、センサー子機として複数設置する。複数のセンサー子機と親機とを1本のケーブルで接続できるようにする。ケーブルは親機から電源の供給を行い、反応信号を親機に返す。どの子機が反応しても一つの反応信号として親機に返す(どの子機が反応したかは判断しない)。

➂ 親機には次の機能を入れる。

  • 電源の供給 電源は車載用12Vバッテリーを使用。バッテリーの残量が少なくなったら電源表示ランプを点滅させる。定期的にバッテリーを充電してもらうが、将来的には太陽電池パネルで充電する。
  • センサーからの反応信号を受けて大きな警報音を1分間程度鳴らす。音は猿への威嚇と人への通知を兼ねる。
  • スピーカーは屋外用トランペットスピーカー(中古)をポールの先端に山側に向けて設置する。音は園主の家の中でも聞こえる大きさにする。
  • 猿が出ない夜間は装置を停止させるため光センサーにて昼夜検出。また、強い日光によるセンサー誤反応への対策のため日光の強さ(快晴か曇りかなど)も検出。
  • 猿反応時に追い払い装置など外部装置を駆動できるよう、バッテリー電源を出力させる。
  • 風雨や直射日光に耐えられるよう屋外用防水ボックスに入れる。

➃ 親機・子機 および ケーブルには可能な避雷対策をとる。直撃雷はとても対策できるとは思えない(その時はバンザーイ)。せめて誘導雷からは装置を守れるようにしたい。

➄ センサー設置範囲に単管パイプを2m程度の高さに何本か立て、頂部にワイヤーを張る。センサー子機、親機、スピーカー、ケーブル等は単管パイプやワイヤーに固定する。単管の打ち込みやワイヤー張りは強度を考えてしっかり作る。

➅ 検知器が完成したら、次の段階で、猿を追い払うための爆音機を検知器からの指令で自動的に動作させるようにする。

3.完成した猿検知機の概要

◆ ポールの様子

メインポール

<メインポール> 親機、センサー子機、バッテリー、看板

スピーカーとセンサー

スピーカーとセンサー子機


不特定の人が興味半分でセンサーに反応されると困りますので、近付かないようにお願いする内容の看板を掲げています。(おかげに猿は看板が読めません)


◆ 親機

親機内部

親機内部

バッテリー

車載用12Vバッテリー


◆ センサー子機

子機設置

左:焦電型赤外線センサー 中:センサー子機正面 右:センサー子機内部

◆ ブロックダイアグラム

ブロックダイアグラム

全回路のブロックダイアグラム

◆ 爆音機を親機に接続し自動動作
猿を検知したときに爆音機が数分間鳴るようにしてみました。

bakonki1

爆音機を親機に接続

◆ ソーラーパネルによるバッテリー充電の追加
ネットでソーラーパネルを格安で手に入れることが出来ましたので、メインポールに設置してバッテリーを充電するようにしました。

solar1

ソーラーパネル追加

猿検知全体3

現在の全体の様子

4.設置した農家さんのお言葉より

去年まではいつも猿のことを気にしていて、出て来そうな時になるとこの場所に来て陰に隠れて見張っていた。農作業があるので見張れないときもできてしまう。その結果、毎年木を丸ごと食べられていた。
今年は猿が出ると警報が鳴るので、その時に行って追い払えば良い。猿も警報が鳴るだけで警戒するようになってきた。
今ごろ(8月初旬)王林(リンゴの品種)の実がこんなに残っているなんて近年は無かった。

このように有り難いお言葉を頂き、私としては作った甲斐があったと思っています。

雑感

近年、山の中に住む獣が里山に出没し隣接する畑の農作物を食い荒らす被害が多発するようになってきました。当地域でも例外ではなく、山沿いに畑のある農家さんは特に猿との戦いに明け暮れているといった状況です。(獣害が無くても元々大変な経営なのに・・・)
山に食料となる植物が減ってきたことと、獣が人を恐れなくなってきたことが原因と言われています。これも自然破壊や里山の荒れなどの影響でしょうか。

2018/4/30追記
このところ設置してきた猿検知システムの有線バージョンと無線バージョンは数百m離れているほぼ隣接に近い場所です。更に隣の2百mくらい離れた園地にはメーカー製の猿検知追い払いシステムも稼働しています。これらの相乗効果なのか、この地帯の猿の群れの出現が、昨年7月以来ありません。それまでは猿の群れにやられ放題でしたので驚きです。猿が出てきたらいち早く通報(猿に対する威嚇音を兼ねる)して人が対応することが良いのかなと考えています。日光による誤反応の音も時々鳴りますが、これも猿にはかえって良いのかもしれません。
先日、今年の猿対策の時期を前にしてそれぞれのシステムの動作確認をしてきました。今のところ特に問題は無さそうです。また、地域住民の方からの騒音苦情も今のところはないので大変助かっています。
気を許さず引き続き様子を見ていきたいと思います。

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