冬は果樹農家にとっては最も大切な剪定の時期です(大切でない作業はありませんが・・・!)。 正月も明けて日本中が仕事始め、私たちも満を持して剪定作業開始です。今年の冬は雪が割と積もっています。朝方で気温もまだ氷点下の中、防寒着で身を固めノコギリや剪定バサミなどを身に付けて繰り出します。
幸水の剪定
剪定前の梨の木は徒長枝(とちょうし)が林立し恐ろしい限りです。この状態を見て木の樹勢が判断できます。正面の木は勢いも良く問題ないようです。我が園は私の先代(父)が植えて40年となり、木によっては衰えが激しいものも出てきています。ぼつぼつ改植の時期を迎えているのですが、それを考えるのは経営者である我が息子の仕事です。
梨の剪定では不要な枝を切り落として必要な枝を残した後、「棚付け」といってワイヤーで組んだ梨棚に水平に枝を縛り付けていきます。幸水では細い枝を2~4年位使って梨の実を成らせます。古い枝の代わりに徒長枝の中から花芽が付いて良い角度で出ているものを倒して棚に付けて使っていくわけです(花芽が付いていない枝は葉芽(葉っぱ)だけで梨が成りません)。次の写真は棚付けが終わった後の様子です。
新しい枝を水平に寝かすには、根元に切り込みを入れるなど技術が要ります。私も3年目となりやっとまともに出来るようになってきました。
切り落とした枝は拾い集めて大部分を焼却処分します(我が農園の冬場の燃料になるのは一部です)。この作業は多くが農家の女性の仕事となっています。木の元に積み上げられた枝は私の嫁さん(+アルバイトの方)が集めて揃えたものです。これも結構大変な仕事です。
剪定は「幸水」の他に「豊水」「南水」「二十世紀」と行っていきます。更に「桃」「りんご」もありますがこれらは全て息子の仕事です。私がやるのは「幸水」の一部と「柿」と「栗」。もっぱらマイペースで・・・!
腋花芽(えきかが)と短果枝(たんかし)
梨の成る芽を花芽と言います。花芽には昨年の夏に伸びた1年目の枝の途中にある「腋花芽」と、2年目以降の枝の途中から出ている「短果枝」とがあります。幸水梨ではこの両方で成らせます。梨の形や味は少し異なるようですが出荷されるときには特に区別されません。実が成らず葉っぱだけが出てくる芽を葉芽(はめ・ようが)と言っています。
これらの違いを以下の写真に示します。
他の品種の豊水、南水、二十世紀などでは腋花芽を成らしません。りんごも腋花芽は成らしません。これらには良い実が付かないためです。腋花芽も成らすのは幸水特有のようです。
徒長枝(とちょうし)と長果枝(ちょうかし)
一般的には幹となる主枝や亜主枝からヒョロヒョロと元気よく伸びた新しい枝を徒長枝と言います。徒長子に腋花芽が多く付いていれば、倒して側枝(成らし枝)として使います。幸水ではその年に成らせられます。他の品種では30°位の角度に倒して成らさずに1年育成し(予備枝という)翌年に水平に倒して側枝とします。そのとき腋花芽の芽は翌年に短果枝として成らせられます。
側枝から出た長い枝(徒長子)を長果枝と言っています(短果枝がヒョロヒョロと長く伸びた感じです)。腋花芽は翌年には短果枝になっていますが、葉芽は長果枝になっている事が多いです。一般に長果枝は邪魔ですので剪定で切除しますが、長果枝の先端の花芽は短果枝扱いで実を成らすこともできます。その場合には長果枝を逆U字に曲げて先端を梨棚に縛り付けます。ちなみに長果枝の途中にある花芽は腋花芽です。