湿度を正確に測りたい

自作している環境監視システムの温湿度センサー SHT21(SHT-21) の湿度の測定値が、農園で今まで使用していた湿度計(数年前に購入)と大きな違いがありました。湿度の値で20[%RH]近い違いがあります。そこで何が本当に正しいのか調べてみることにしました。
湿度をより正確に測定できるものを調べたところ乾湿計に定評があることがわかりました。そこで乾湿計を購入して SHT21 や他の湿度計と比較してみました。乾湿計の大部分は表により湿度を求めるようになっていますが、ネットで調べると計算により求める方法が掲載されていましたので、エクセルで計算により求めることにしました。
温湿度研究中1b

1.乾湿計から湿度を計算で求める方法

調べた結果を示します。

まずは気温t[℃]における飽和水蒸気圧 [hPa]の求め方を示します。
  <Tetensの近似式> Ew = 6.11x10^(7.5t / (t + 237.3)) [hPa]
  <理科年表> 気温t[℃]から水の飽和水蒸気圧Ew[hPa]を求める表があります

ここではTetensの近似式を使って湿度を求めることにします。

<手順>
1.乾球の指示値t[℃]における飽和水蒸気圧Ew[hPa]を求めます
   Ew = 6.11x10^(7.5t/(t+237.3)) [hPa]

2.湿球の指示値t'[℃]における飽和水蒸気圧Ew'[hPa]を求めます
   Ew'= 6.11x10^(7.5t'/(t'+237.3)) [hPa]

3.乾球指示値t[℃]における水蒸気圧e[hPa]を求めます
  通風しない乾湿計(一般の家庭用の乾湿計など)の場合
   e = Ew'-0.0008・P(t-t') [hPa]
  通風乾湿計(2~5m/sec)の場合
   e = Ew'-0.000662・P(t-t') [hPa]
  (e = Ew'-0.000583・P(t-t') [hPa] 湿球氷結時)
  なお、Pは大気圧[hPa]  (1気圧 1013.3[hPa])
  1気圧を当地の気圧に換算すると950[hPa]ですので、私の計算はこの値を使います。

4.湿度(相対湿度)H[%]を求めます
   H = e/Ew ・100 [%]

5.その他
  水蒸気圧がわかっているときの露点温度は
   露点温度 = 237.3/((7.5/(Log(e/6.11)/Log(10)))-1) [℃]
  空気中に含まれる水蒸気の量[g/m^3](絶対湿度)は
   絶対湿度 = 216.7・e/(273.15+t) [g/m^3]

乾湿計の値から湿度[%RH]、絶対湿度[g/㎥]、露点温度[℃]を求めるエクセルの計算シートを作りましたので掲載します。
乾湿計の値から湿度・絶対湿度・露点温度を求めるエクセルシート

上記エクセルシートの使い方
・計算には最低、乾球の値、湿球の値、気圧、強い通風(y/n)が必要です。
・計算シートの中で標高から気圧を簡易的に求められます。
・強い通風(y/n)は、乾球・湿球共に強い風に晒されているなら y を入力すると
通風乾湿計として計算します。通風乾湿計は湿度を正確に求められます。
・色が付いているところには計算式が入っているので、変更や削除をしないようにお願いします。
・マクロは使っていませんのでご安心ください。

2.各湿度計の比較結果 (2016年4月 補正)

2016年1月に数日掛けて比較測定しました。なお、測定結果表については、2016年4月に補正したものです。

測定環境
・先頭の写真に示すように、屋外の屋根下の壁に各湿度計(温湿度計)を並べて掲げた。
・高さ約1.5m。風通しが良く直射日光が直接当たらない場所を選んだ。
結果の整理方法
・風が強いときのデータ、湿球が凍結したときのデータは除いた。
・乾湿計による湿度計算は先の方法により行った。
・使用したSHT21が「飽和塩法による校正」で+7[%RH]程度の誤差が判明したため、
 SHT21の測定結果を-7[%RH]補正した。
・結果表はSHT21の値をキーとして昇順に並び替えた。

乾湿計実験1b

センサー SHT21 の値を基準として比較したのは次の理由からです。
➀ 自作環境監視システムのセンサーとして使用中である
➁ メーカーのデーターシートによる精度が高い
➂ 専門の方から信頼性についての助言を頂いた

3.比較結果

測定結果表の「SHT21に対する差」の項により各湿度計の指示を比較してみます。

「乾湿計」の指示は平均で6[%RH]プラス側に偏っています。差のバラツキは特に大きく13[%RH]もあります。-1[%RH]の点を特異点として外しても 9[%RH]です。屋外であるため風が結構影響しているのではないかと思われました。

「アナログ CR-151」は1カ所 -10[%RH] のズレがあります。これを特異点として外すと ±4[%RH]以内の差で SHT21 とかなり一致しています。バラツキは6[%RH]で「乾湿計」の 2/3 です。

「デジタル xx-xxxx」は我が農園で5~6年前に4台購入し、今まで何の疑いもなく使ってきたものです。指示値は平均で -16[%RH] と大きくマイナス側に偏っています。差が -10[%RH] の点を特異点として外すと、バラツキは6[%RH]で[アナログ CR-151]と同じです。

湿度計によって指示がこのように大きく異なることに驚きました。
このデータを見る限りでは「乾湿計」が正しいとして進めていくことはできませんし、「何が本当に正しいのか」を判断することもできません。確信を得るため更に検討を加える必要があるようです。
今回、指示値が最も低かった湿度計(温湿度計)は、地域の業界で斡旋されて購入した物でしたので、専門の機関に調べて頂くよう話をしてあります。その結果も待ちたいと思っています。

ここで使用したセンサー SHT21 および 各温湿度計のメーカー情報等は「湿度計(温湿度計)の精度 まとめ」のページの最後にまとめました。

関連ページ

1.湿度を正確に測りたい
2.飽和塩法による湿度計の校正
3.恐るべし 通風乾湿計 & SHT21
4.湿度計の精度 まとめ
5.湿度計(センサー)の経年劣化 5年後の様子