温湿度センサーSHT21を使った環境監視システムを2016年に立ち上げて5年が経ちました。忙しさにかまけてずっと放ってあったのですが、どうも湿度の表示が高すぎると感じてきました。今回システムの改善を機にセンサーの校正をしてみることにしました。
校正結果
当時の「飽和塩法による湿度計校正」の装置をそのまま使って校正を行い、当時の値と比較してみました。その結果を次に示します。
・SHT21、EX-2737、乾湿計は2016年と同一のもの
・SHT31はSHT21の代わりに今回更新したもの
・TP50は一般的なデジタル温湿度計で今回新規購入したもの
経年劣化が大きかったSHT21
環境監視システムでSHT21センサーを6台設置してきました。①は屋外の屋根下に、②はビニルハウス内に、③は屋内作業場に設置してきたものです。結果を見るとどのセンサーも劣化が大きく進んでいることがわかります。特に劣悪な環境に置かれたものほど劣化が激しいようです。
SHT21は測定値が大きくプラス側へシフトしていることがわかります。2016年に購入後数年経過したデジタル温湿度計(AD-5680)4台を校正した結果を掲載していますが(飽和塩法による湿度計の校正)、マイナス側へほぼ均一に15%程シフトしていました。SHT21は容量式センサー、AD-5680は抵抗式センサーを使っています。その経年劣化の違いがよくわかります。
SHT21ですが設置後校正を一度も行なっていないのでどのように劣化が進んだのか正しくはわかりません。大体でよいので劣化の様子を知るために今までシステムに蓄積してきたデータをグラフ化してみました。
次に示すのは、2016年11月から2020年10月までの「SHT21①センサー」が記録したデータのグラフです。
上側の青いグラフが湿度ですが、年の経過と共にプラス側にシフトし100%に飽和する日が次第に増えていることがわかります。年間の湿度変化が年ごとに大きく変わらないとしてみると、年々劣化が進みプラス側の誤差が次第に大きくなっているという結論になります。センサー設置1年後にはすでに劣化の影響が表れている感じです。SHT21の仕様書では湿度精度は±3%以内とありますが、外気に晒されるような厳しい環境では、1年後にはその倍の誤差が表れていると見て良いのではないでしょうか。年々誤差が倍増していくとすれば中ら校正結果と一致してきます。
当初は精度の高さに感激したSHT21でしたが、経年劣化という点では大変残念な結果となってしまいました。抵抗式・容量式を問わず半導体センサーのもろさを実感した次第です。どうも市販のデジタル湿度計の耐用年数は1~2年と見るのが妥当のようです。湿度計は1年ごとの校正が推奨されているのはもっともな事ですね。
因みにエンペックスEX-2737(アナログ)は全体にわたってマイナス側に10%RH程度シフトしているようです。その誤差を表示値にプラスして読めばほぼ正しい値が得られますので使えないことはありません。2016年の校正では数年経過したデジタル湿度計AD-5680(抵抗式センサー)が全体的にマイナス側に15%RH程シフトしていたので同様にして使うこともできましたが、今回のSHT21は単純にシフトして使うことは無理なようです。
新しい温湿度センサーに期待
環境監視システムの温湿度センサーですが、今回SHT21を全て廃棄し同じメーカーのSHT31に変更しました。仕様上はSHT21より高精度です。半導体センサーは基板にハンダ付けしなければなりません。非常に小さなセンサーですのでハンダの熱やフラックスの煙の曝露を免れません。私は既に小型基板にハンダ付けされたものを使っていますが基板メーカーの工程が影響する可能性もあります。今回の新しいセンサーが今後どのように劣化を示すのか興味があるところです。
改善されていることを望むかぎりです。今回、一般的なデジタルの温湿度計(ThermoPro TP50)を新たに購入して校正してみましたが、センサーの種類はわかりませんが驚くほど正確でした。この湿度計も含めて今後の経年変化を見ていきたいと思っています。
関連ページ
1.湿度を正確に測定したい
2.飽和塩法による湿度計の校正
3.恐るべし 通風乾湿計 & SHT21
4.湿度計の精度 まとめ
5.湿度計(センサー)の経年劣化 5年後の様子