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平畝の畑
★幅1mの平畝で不耕起栽培。5月に種蒔き・苗の定植開始。種蒔き・定植時以外は水やり無し。野菜や草の根はできるだけ残す。収穫後は休まずに次の作物を育てる。
★1作毎に畝に2~3cm厚にチップ敷き詰め。途中でチップの追加も。微生物の活動を促すために土とかき混ぜる。
★畝の草はできるだけ根を残して切る。ヤブガラシなどの多年草はこまめに抜く。
各野菜毎の様子
キャベツ 白菜 トウモロコシ ネギ トマト カボチャ 人参 青大豆 大根(2作目) ズッキーニ
キャベツ
5~12月の間、畝を変えながら5作ほど作りましたが、4作目までは苗のうちに枯れたり、青虫などにやられたり、大きく育たなかったりで苦戦しました。かろうじて結球したものもナメクジが巣くっていたりして、食べても苦く美味しくありませんでした。
特にキャベツは青虫が好むので2作目以降は防蝶網を被せました。初めてでなんとか形になって欲しかったためです。
トウモロコシの後に作った冬取りの5作目が約20cmに結球し、虫の食害も少なく、やっとまともなものになりました(11/16の写真)。品種は「いろどり」と「金系201」。12月になると寒さに遭ったためか「金系201」はそこそこ甘くなり、「いろどり」もまあまあの味でした。
白菜
5~12月に掛けて5作ほど作りました。第1作目は塔が立ったものもありましたが7月中旬にかろうじていくつか収穫できました。第2~4作目まではことごとく虫にやられて全滅でした。白菜は青虫はあまり付きませんが地面から攻めてくる虫の被害が大きく、防蝶網は役に立ちませんでした。第3作目は結球を待たずにほとんど消滅してしまいました。
冬取りの第5作目もかなり虫にやられ十分な結球には至りませんでした。
トウモロコシ
1作目 <品種 「カクテル84EX?」市販苗、「スイートハニー」自家苗
5月中旬に定植。「カクテル84EX?」は全株が順調に生育しましたが、「スイートハニー」自家苗の生育は悪く株毎の差も大きかったです。
ほとんどすべての穂に害虫のアワノメイガが付いたため、穂を切り取って受粉に使った後すぐに廃棄していきました。茎や実に食い込まれたものもありました。
「カクテル84EX?」は割と良くでき美味しく食することができました。なお、場所は昨年までトマトやカボチャを3年ほど作っていた所です。
ネギ
<品種「松本一本ネギ」>
5月末に苗を20~25cmの深さに穴底植えしそのまま放置しました。一般的な方法で他で育てたものと比較すると生育が遅かったですが、10月末にはほとんど遜色ないサイズになりました。
穴底植えは簡単なネギ作りの方法で、畑(畝)に直径3cmの棒を垂直に差し込んで30cm(ネギの頭が少し出る)位の深さに穴を開け、ネギの苗をその中へ放り込んでいくだけです。その後の土寄せなどは一切行いません(慣行農法では事前に土作りは必要)。
ここの場所は畑がまだできていないので、深さ20cm以下でも固い層に当たる所もありました。根が割としっかりと張り、掘り出さないと途中で千切れてしまうものもありましたが、その分畑の団粒化も進んだのではないかと思います。
トマト
<品種「ホーム桃太郎」ほか>
ここは完全に荒れ地だった所。いきなり大玉と中玉を作ってみました。
5~6月初旬に掛けて定植(根付かない所は何回も植え直した)後1ヶ月程してからやっと成長が開始されました。これで順調にいくかと思ったのですが、梅雨の長雨による割れと日照不足で残念ながらまともなものがほとんどありませんでした。後半になってもほとんどの実が、未熟、割れ、尻腐れ、オオタバコガ被害で口に入るものはわずかしかありませんでした。
炭素循環農法の紹介サイトでは最初は葉物野菜から始め、畑の団粒化が進んでから果菜を育てると良いとあります。実際その通りで微生物が貧弱で団粒構造がほとんど出来ていない所にいきなりトマトは無謀だったということでしょう(いくらチップを撒いても)。しかし、この一作目で畑の団粒化も少しは進んだと思われます。来年もこの場所に作って結果を見るのが楽しみです。(炭素循環農法は連作障害にも強いとのことですから)
カボチャ
<品種「栗えびす」「ロロン」「伯爵」など>
ここも完全に荒れ地だった所。5~6月初旬に掛けて定植し(根付かない所は植え直し)てから1ヶ月程はトマトと同様にほとんど育ちませんでした。元々が土はカチカチで、炭素資材だけは十分与えてありましたがそれだけでは無理だったと思われます。
その後の株の伸びは品種による差が際立っていました。「栗えびす」は割と順調に育っていきました。玉数は株当たり1~2個でサイズもまあまあ。「ロロン」は親ヅルだけにしたのですがあまり伸びず、玉数は株当たり1個でサイズも小さかったです。最後までほとんど育たなかった苗もありました。
人参
1作目 <品種「時なし五寸人参」栽培100~120日 直径5~7cm>
5月中旬に種を蒔き、その後は割と順調に発芽し育成していきました。他との比較は出来ないのですが育成はかなりゆっくりな感じでした。収穫は間引きも兼ねながら順次行い、最終は播種後170日近い10月下旬に行いました。最後の物はまあまあの太さでした。
全体としては固めで人参の香りが強くお世辞にも美味しい人参とはいえませんでしたが、妻に頑張ってもらい食卓にのせてもらいました。
割れも多く半分位は廃棄となりました。
青大豆
豆類は根粒菌がチッソを固定するため、炭素循環農法では初期の畑には作らない方が良いと言われています。私としては自分で作った豆も食べてみたいので畑の端の方(荒れ地だった所)へ作ってみました。
<品種「青畑大豆」 味噌豆・浸し豆用 6月蒔き10~11月収穫>
5月末に50粒程の種を蒔いた後、割と勢いよく育っちました。9月頃になってやっと花が咲き、その後実を付けて12月に1.5升位の豆を収穫することができました。収穫が遅れたためカビなどの不良豆も多くできてしまいました。10月に枝豆として食べたものは一般の枝豆より大変美味しかったです。
害虫のマメコガネが7月頃より飛来。10月まで畑に行く度にマメコガネ取りが日課になりました。
マメコガネの多くが逃げるときに葉から落ちるので、ロートを使って下で受けると割と簡単に捕まえられます。獲っても獲っても毎日飛来してくるので、ペットボトルにたまった死骸も結構な量になりました。
大根(2作目)
<品種「秋の彩」 ゆっくりと畑に置ける青首大根 ゆっくり太り寒さに強い>
8月末に「つるなしインゲン」の後作として播種。まめ科の後なので固定されたチッソが効くかと思われましたが、品種情報の通り非常にゆっくりとした生育で、間引きも弱かったため中々太くなりませんでした。
芽が数cm位に伸びたところで、株の並びに沿ってモグラの攻撃を食らいました。この畑ではモグラが土とチップとの境目を進む感じです。きっとその境目にミミズが繁殖しているんでしょうね。大根の根の浮きが心配でしたが、ほとんど枯れることはなかったです。
年を越し正月に収穫したものが長さ25cm太さ8cm程になっていました。肌も大変きれいなものができました。
(一作目の様子は「炭素循環農法 その2」に掲載)
ズッキーニ
ズッキーニの様子は 「炭素循環農法 その2」に記載
畝立ての畑
芋類は畝で作りますが収穫時には畝を崩してしまうため平畝の畑とは別に作りました。
里芋 サツマイモ
里芋
平畝の畑の隣、昔の段々田んぼの一つで面積0.3a程の畑。他と同様に耕作放棄されていた所で前年は在来農法でカボチャを作っていました。今回、炭素循環農法により里芋を作ることにしました。畝の上には炭素資材を載せるため土寄せはしたくありません。そのため草マルチを厚くして土寄せの代わりにしようと考えました。
・4月中 完熟チップ堆肥を撒き(1~2cm厚)浅く耕起
・4月下 廃菌床を撒き(2~3cm厚)浅く耕起 畝立
・5/11 苗(7株)定植 品種は土垂と八ツ頭 土寄せを行わないため深めに植えた
・5月中 廃菌床と剪定枝チップで追加マルチ(3~4cm厚)
・6月~ 草マルチ(防草と雨除け)
・8~9月 周囲の草を刈り、草マルチ追加(厚く)
・10/24 収穫開始
・10月末 残った株の防寒対策・・・茎を切り土と草を山盛りに被せた
畝の草むしり、周囲の草刈り、畝への草マルチ以外は放任。定植後は水やり一切なし。
私が里芋を作るのは2度目ですが、写真に見るように背丈を超える大きさに育って驚きました。近所の畑を見てもこんな里芋はありません。小芋の芽欠きも行わなかったため大小沢山の葉っぱで覆われてました。
収穫の写真はありませんが、大変大きな親芋で小芋も沢山採れました。日焼けで食に適さない小芋も出来てしまいました。親芋のサイズは土垂で直径20cmを超える大きさ。
八ツ頭は全体に土垂より小ぶりでしたが親芋の直径は15cm程。親芋も茎も食卓にも上りました。(茎は乾燥させて煮物にすると大変美味しいです)
サツマイモ
ここも平畝の畑の隣で昔の段々田んぼの一つで面積1a程の畑。やはり耕作放棄されていた所で、私がサツマイモを作り始めて3年目ですが今年は炭素循環農法で作ってみることにしました。
・4月中 完熟チップ堆肥を撒き(1~2cm厚)浅く耕起 畝立て
・4月下 畝に廃菌床と剪定枝チップでマルチ(3~4cm厚)
・5月 畝に草マルチ 畝間にも剪定枝チップを敷いて草抑制
・5/28 苗(約100株)定植 品種は「べにはるか」
・6~7月 草むしりと草マルチ追加 この頃からツルの成長が急に早まる
・10/14 収穫
周囲の草刈り、草むしり、畝への草マルチ以外は放任。定植後は水やりも一切無し。
7月中旬、ツルが旺盛に伸び始めたのを見て畝間の最後の草むしりを行った。その後は収穫まで完全に放任。
2年間は慣行農法で栽培してきましたが、1年目に対して2年目はほぼ半作。畝間が狭く光合成が妨げられたのも原因と思われました。
3年目となる今年は肥料を全く入れない炭素循環農法。昨年の反省から畝間は広げました。
収穫時の写真からわかるように大きく揃った芋が沢山できました。過去3年間で最高の出来でした。干芋用に出荷しました。
チップの様子
各作物の1作ごとに、苗のまわりに2~3cmの厚さにチップを敷き詰めた後、微生物の繁殖を促すために下の土と少しかき混ぜていきます。このチップは3月中旬に果樹の剪定枝をチッパーで砕き積み上げてあったものです。
チップの山にはカブトムシが産卵していて崩すと幼虫が次々に出てきます。自然の営みと生命力の強さを感じます。カブトムシの幼虫は再びチップの中に埋めて大事にします。自然界に飛び立つのを待つのと、子供達の自然教室にも提供しています。
カブトムシの幼虫や様々な微生物がチップをどんどん分解していくので、10月頃にはチップの量が当初の半分位に減ってしまっています。
なお、チップの山は雨よけのためにブルーシートを被しています。ブルーシートにすき間があるとムクドリがこの幼虫を狙って飛来しチップの山を崩していきます。これも自然の営みです。
畝毎の経過
まとめ
★苗は市販苗と自家苗を使った。市販苗は自家苗に比べてしっかりしていて活着も生育も割と良かった。自家苗の多くは根切り虫の餌食になってしまった。苗作りも初心者のためしっかりした健康な苗を作ることも課題である。
★新しめのチップの上に蒔いた種は発芽率が非常に悪かった。種蒔き時にチップをどかすか、芽が出た後にチップを敷き詰めるようにした。新しめのチップといっても数ヶ月経過した物。
★畑の中の場所や過去の経歴によって、作物の種類・品種によって出来不出来の差が大きかった。昨年まで使っていたところは栽培に使える柔らかい土層が20cm位あるが、全く新しい場所は栽培に使える土層が非常に浅かったため根張りが制限されて水はけも悪く、そのために出来が非常に悪かったと思う。
炭素循環農法では最初の年はチップを撒いた後浅く(5cm程度)耕起するとのことであったのでその通りに行った結果であった。チップを撒く前に一度は深く(20cm以上)耕起して固い土層を少しでも柔らかくておいた方が良かったのではないかと思う。表面には既に炭素資材が多くあり今さら深い所を起こすわけにはいかないので、我慢してこのまま続けて様子を見ていきたいと思う(何年掛かるか)。
★今年は梅雨と夏の夕立の大雨に祟られた。それまで割と順調に発酵が進んできた畑も大雨を境に腐敗に大きく傾いてしまった感じである。それまで順調に見えた葉野菜類が夏からは一気に虫の餌食になった。大きなミミズが発生し引き続いてモグラも出現し畑もボコボコになってしまった。最近の日本は多雨に祟られる年が大変多くなった。(年数の浅い)炭素循環農法にとって多雨対策は大きな課題である。平畝であってもビニルマルチの活用を考えたい。
★畝立てによる芋畑は平畝の畑と比較して驚くほど良い結果になった。厚く敷いた草マルチの効果が大きかったのかもしれない。好例として記憶しておきたい。
★雨の多い日本に適した炭素循環農法の素晴らしいやり方を、菌ちゃん先生こと吉田俊道さんが「菌ちゃん農法」として紹介され、ネットやYouTubeで見ることができる。次年度は是非とも取り入れたい。