高所作業車自作 その5 塗装と最終組立

ここでは塗装や最終的な組立てなどについて掲載します。

14.塗装

鉄材はそのままでは錆びてしまいますし、屋外の使用ですから雨にあたったときの事も考えておく必要があります。少し位の降雨で濡れることはやむを得ませんが、屋外に置き降雨の心配のある場合は必ずビニルシートを被せることにします。どのみちプロが行うような塗装はできませんので、一般的な方法で防錆および上塗の塗装を行いました。

雨侵入防止

アーム端と雨侵入防止

なお、傾きがあるリンクアームの角パイプは、あらかじめ雨の入りやすい側を鉄板で塞ぎTIG溶接してあります。

角パイプは購入時から防錆のため内面・外面が油で覆われていたため、内面・外面共に特に念入りに脱脂をし、十分に乾燥してから塗装しました。内面はパイプの口から脱脂材や塗料を流し込むやり方で行いました。

基台・作業台・その他部品などは、汎用の脱脂材で脱脂した後、塗装を行いました。

脱脂洗浄 防錆塗装 上塗塗装
リンクアームの
角パイプ
内部 ラッカーシンナー流し込み洗浄
(洗浄後数日乾燥)
外部 ラッカーシンナーで拭き
内外部共
専用防錆塗料
内外部共
アクリルシリコン塗料
その他の鋼材 ラッカーシンナー、脱脂材 専用防錆塗料 アクリルシリコン塗料
◆ 脱脂材 シリコンオフなど
◆ 専用防錆塗料 必殺錆封じ(染めQテクノロジィ)
  愛用している防錆塗料。上塗りまでの時間が少々短いが鉄への密着性が非常に高い。
  上塗りは刷毛だと少しやりにくい。
◆ アクリルシリコン塗料 カラー錆鉄用(アサヒペン) 赤、黒
   シリコンアクリル樹脂塗料 錆止・上塗兼用

15.最終組立て

下の段から順に組み立てていきます。特にアームの最下段は、固定軸・ベアリングの移動軸・シリンダのロッド軸などが絡み合い結構面倒です。今まで何回も組立てと外しを繰り返してきましたので慣れていますが、重量もあるので慎重にやらないと大けがをします。
軸と軸受け、ベアリング外輪とレールには全てにグリスを塗っていきます。

リミットスイッチ

リミットスイッチ挿入

塗装した面は厚みが少し増しているので組み立てにくい部分も出てきますが、そこは無理矢理!。

油圧シリンダが伸長していくと、最大となる前にシリンダの胴体が機構と干渉する問題が残っていました。リミットスイッチを付けてシリンダの胴体が当たる直前に油圧ポンプを止めるようにしました。回路の変更は上昇用の電磁弁の回路にリミットスイッチのa接点を直列に挿入しただけです。

最終的に組み立てるときはやはり感慨があります。「この楽しみがあるから ものづくり は面倒でも止められない」と言ったところでしょうか。

16.実稼働と課題

この年の秋の柿の収穫から実稼働が始まりました。その後の冬場の剪定にも活躍しています(今)。「概要」のページにも写真がありますが、愛車のトヨタライトエースに載せて遠い畑にも持って行きます。
地上高が最大2mですので自分の身体の長さを加えて地上4m程度までの作業ができます。もう少し欲しいと思うこともありますが、安全を考えればこんな程度が良いのかもしれません。また、今の果樹栽培はできるだけ低樹高にして作業性を上げる方向に来ています。高い脚立や高所作業車を使わないでも済むように樹木を誘引したり縮伐・剪定します。従って、この高所作業車でも届かない木は高さを縮めていけば良いわけです。(全てがそうはいきませんが)

柿の剪定後

柿の剪定 最大に伸ばして全て剪定できました。(左下にちゃっかり写っています)

課題について
➀ アームを最も縮めた状態から上昇させるときには、引っ掛かり感とその後の跳ね上がりが残っています。
リンク機構に対してシリンダを入れる位置を工夫したり、シリンダを増やせば良いのかなぁと思います。メーカーさんの作ったものを見る度に工夫された様子を楽しんでいます。このマシンは元々の運搬車の走行機構がかなり邪魔をしていて制限が大きかったので、現状が最良と考え、できるだけマシンへの負担が掛からないように操作することにしています。
➁ リンク機構の強度的な心配が残ります。
リンクアームは自分としてはできる限りの補強はしましたが、アームの補強部分以外の肉厚は元のままです。最大に伸ばしたときはリンク機構のねじれによる揺れも少し怖いです。また、➀の上昇始めの大きな負荷が掛かるときも心配です。そのほか油圧系も安心できません。女房にも「ちゃんと点検してよ!」と言われていますが、注意して使う以外はありません。最も強度的な心配は何を作っても同じですが・・・。

➀➁の対策として油圧ポンプのモーター制御ができないか考えています。
簡単に言えばモーターのPWM制御ということになりますが、実現するためにはクリアしなければならない技術的な課題がいくつかあります。今後のものづくりの楽しみのひとつにしていきたいと思っています。

➂ 運搬車のクローラーの間隔が狭すぎる問題があります。
車体の左右の安定のためにはクローラー間隔が広いほうが良いのは当然ですが運搬車のつくり上どうしようもありません。今回のマシンでは重心をできるだけ低くすることに気を使ってきました。運搬車部分の重量に加えて、昇降機構の基台+油圧シリンダ基部+油圧ポンプができるだけ低くなるようにしました。傾斜の畑では車体の前後方向をできるだけ傾斜方向に向けて止めますが、場所によってはそうできないところもあります。傾きセンサーなどでアラームを鳴らすこと位はやってみたいと思っています。

また、クローラー間隔が狭いと旋回の抵抗が大きいため、一度に大きく旋回すると畑の土や草が寄せられてしまいます。

これらは運搬車を調達した時点で決まったことなのでどうしようもありません。今後、作り直すことがあれば、もっとクローラー間隔が広いものを探したいと思います。


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