強度計算にチャレンジしてみましたので、高所作業車の最後として投稿します。ネットで勉強させて頂き、必要最低限の計算ですが行うことができました。
本来ならば強度計算は最初に行わなければならないのですが、作りながら学ぶという私の「ものづくりパターン」で一番最後になってしまいました(その方がモチベーションも上がります)。もし、内容に誤りがあるようでしたらご指摘頂ければ嬉しいです。
18.強度計算
「強度計算の結果表」にあるように今回3つの状態について強度計算を行ってみました。ネット上では、一般構造用鋼材(SS400)の長期許容応力度(引張 圧縮 曲げ)は一般的に安全率1:5 で f=156[N/m㎡] の記載が見られましたので、計算の条件もこれに従いました。
形状が単純ではないためエクセルの計算シートを作成してみました。全ての計算結果が見られますのでよろしければご覧下さい。少しぐらい複雑な形状でも複数の矩形に分けて座標を入力し計算できるようにしてみました。
なお、エクセルの計算シートはマクロを使っていませんのでご安心下さい。
強度計算表(エクセル) 強度計算表(PDF)
勉強の手始めとして「補強後の強度計算」をまともにやってみたものです。こちらもよろしければご覧下さい。 補強後の強度計算(PDF)
強度計算の結果表 (条件:許容応力度f=156[N/m㎡]) | |||
➀ 角パイプ素材 (加工前) |
➁ 破断前 (丸穴を開けた状態) |
➂ 補強後 (上面と丸穴部を補強) |
|
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アーム 断面図 (中央部) |
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引張強度 | 36342[N] 3.71[tf] |
22364[N] 2.28[tf] |
48510[N] 4.95[tf] |
許容曲げ モーメント |
475[Nm] | 438[Nm] | 856[Nm] |
➀ アームに使用した角パイプ素材(加工前)の強度
計算シートの検証も含めて計算してみました。他のサイトで計算した結果とほぼ一致したので、基本的な誤りはないと思います。
➁ 丸穴を開けた(破断前の)状態の強度
全ての角パイプには両端と中央に、丸パイプを貫通させるための穴をφ27.4のドリルで開けました(計算ではφ28の穴としました)。日の字に組んだ方は丸パイプと溶接しましたが、単独アーム側は穴を開けたままの状態で強度が弱くなっています。計算したのはこちら側です。
理論計算2の結果より、アームの角度が最低の3°のときには 引張強度 23723[N](2.42[tf])以上、および許容曲げモーメント734[Nm] 以上の値が必要です。計算結果を見るとどちらも下回っています。破断したときはリンクが3段でしたので更に大きな強度が必要でした。計算の条件である安全率1.5を超える負荷が掛かり、破断に至ったことが想像できます。(リンクを3段にしたときに最下段に掛かる力は計算していませんが、2段のときの1.5倍は少なくとも掛かると思われます)
➂ 補強した後の角パイプの強度
単独アームは破断後には全ての丸穴を補強しました。補強の内容は「その4 仮組立とアーム破断」をご覧下さい。中央部の丸穴の左右100mmの間は空洞部を充実させましたので、計算を簡単にするために「穴を開けなかった」として計算することにしました。
強度計算の結果からは、➁の破断前の約2倍の強度となっています。リンク数を2段に下げ、上昇速度も破断時よりかなり遅くしましたので、総合的に考えて強度を保っていると考えられます。引張強度は必要とされる値のほぼ2倍ですが、許容曲げモーメントはギリギリの値です。実際には同じアームに対して引張力と曲げモーメントとが同時に掛かるのでできれば3~4倍以上の余裕が欲しいところです。このことから、使用に当たっては過負荷に十分に注意することが必要と思われます。
まとめ
人が乗る高所作業車としては強度的にギリギリで不安が残る結果となりました。当初の予定通り、私個人の責任で私個人が使う高所作業車ですので、気を付けて使っていきたいと考えています。現在、もう一度作り直すことは考えていませんが、何らかの機械物を作ることはあり得ます。その時には今回の勉強が生かせそうです。
参考にさせて頂いたサイト
今回の強度計算を行うために次のサイトで勉強させて頂きました。
◆CAE技術者のための情報サイト 機械工学->材料力学 10.断面一次モーメント 11.断面二次モーメント 13.部材に働くモーメント など 高度な解説もありましたが、具体例もあり計算の仕方がわかりやすく解説されて いました。
関連ページ
高所作業車自作 概要
高所作業車自作 その1 主要材料調達
高所作業車自作 その2 理論計算1
高所作業車自作 その3 製作
高所作業車自作 その4 仮組立とアーム破断
高所作業車自作 その5 塗装と最終組立
高所作業車自作 その6 理論計算2
高所作業車自作 その7 強度計算にチャレンジ