栗にハマキガ幼虫 大量発生

5月のはじめ、果樹(梨・りんご)の作業に追われていて、しばらく栗畑を見ていないことに気が付きました。昨年もうっかりしていてコガネムシの大量発生に遭い、幼木の葉を見事に食われたのでした。
心配になって栗畑に行ってみると・・・「今年はこれかー」。何と葉っぱがクルクルと巻かれているではありませんか。

ハマキガ0

「ぱっと見」どおってこともない普通の栗の幼木

ハマキガ2

少し上を見ると 葉っぱがクルクルと巻かれている

ハマキガ4

成木も上の方を見ると 見事にクルクルと巻かれている

1年目の幼木の被害は少ないのですが、2~3年の幼木では半分以上の葉っぱがやられています。成木も上の方の葉っぱは見事に巻かれています。大量発生です。このままでは光合成が阻害されてしまい、下手をすると幼木は枯れてしまいます。

巻かれた葉っぱをゆっくりと開いてみると数mmの見落とす位に小さな虫が1~2匹入っています。大きい物では約1cm程度に成長したものもいます。大きいものを採集してきて写真に撮ってみました。

ハマキガ3

巻かれた葉っぱの中に居た虫

ネットで「ハマキムシ」で検索してみるといろいろな種類のハマキムシが出てきました。一般的には「ハマキガの幼虫」とのことです。「年に3~4回ほどのサイクルで成虫と幼虫を繰り返して発生し被害が拡大していく」とのことです。ネットでは上の写真に似たものは見当たりませんでしたが、ハマキガの一種として対応することにしました。
そう言えば昨年も少し葉っぱが巻いていたことを思い出しました。ネットで調べたところハマキガは落ち葉の中に潜んで越冬するとのこと。特に今年は暖冬でしたので多くが越冬に成功したのでしょう。「この野郎ー」と叫びたくなる気持ちです。

徹底的に駆除をしたいと思い良い殺虫剤を探してみることにしました。近年、出荷する農産物では適用登録されている農薬しか使ってはいけないことになりました。その害虫に効く農薬なら何でも良いというわけには行きません。また、栗の開花が近いのでミツバチなどに対する影響も考慮する必要があります。ネットの情報や農協の技術員の方々にも当たってみました。(この地域では栗はマイナーな作物ですのであまり情報がありません)

スミチオン水和剤40
 ・有機リン系の殺虫剤
 ・コリンエステラーゼの活性を阻害し殺虫作用を示す
 ・害虫に対して接触効果、食毒効果がある
 ・植物に浸達性がある

エルサン乳剤
 ・有機りん殺虫剤で広範囲の害虫防除にすぐれた効果を示す
 ・速効的であり各種害虫の同時防除が可能
 ・野菜のコナガ、アオムシ、ヨトウムシなどりん翅目害虫にすぐれた効果を示す
  ハマキムシ類にも効く
 ・栗ではクリイガアブラムシ、モモノゴマダラノメイガなどの防除用として一般的

フェニクスフロアブル
 ・害虫の筋肉を収縮させるという従来の殺虫剤にない作用機作を有する
 ・幅広いチョウ目害虫に高い効果。特に幼虫に高い活性を示す
 ・害虫に対して散布後長期間、安定した効果を示す
 ・天敵・有用昆虫に対する影響が少ない

トアロー水和剤CT
 ・チョウ目害虫の幼虫に対し、選択的に作用し安定した効果を発揮する 
 ・チョウ目以外の昆虫には影響はほとんどなく、開花時に使用してもマメコバチ、
  マルハナバチ、ミツバチなどの有用昆虫にも悪影響を与えないので、開花期の
  散布も可能
 ・チリカブリダニ、クモ、寄生蜂などの天敵にも悪影響を与えない 

その他にもいくつかの農薬が候補に挙がりました。

いろいろと悩んだ末、フェニクスフロアブルを展着剤と共に散布することに決めました。有機リン系殺虫剤はミツバチへの害も心配ですし、7月後半から別の害虫の駆除にも使う予定があるためです。
雨が明けた5/11、満を持して徹底的に散布しました。近年の農薬の散布は、農薬の濃度を効果のある最低限に抑える代わりに木の隅々まで丹念に散布する方法が採られます。来年は絶対に発生させたくないという私の強い気持ちもあります。もろもろ含めての「徹底的」です。

結果

翌日から1週間程、幼木の巻き葉を解きながら薬の効きを確認していきました。

➀ 翌日の様子
まだ元気な虫は多いですが、半分位の虫は動きが鈍くなっている感じがします。防除前に写真に撮ったような1cm位に育った虫は全く見掛けません。

➁ 3~4日経過した様子
元気な虫は非常に少ないです。居ても潰してしまいます。死んでころころと転がり落ちてくる虫は縮んで白くなっています。動きの非常に鈍い虫も居ます。薬剤の説明では遅効性とあります。虫が薬の付いた葉を食べて着実に効果が出てきていると感じました。

➃ 1週間程経過した様子
元気な虫は全くといって良いほど見掛けません。防除成功と言って良いと思います。中にはまだ生き残っている虫も皆無では無いと思います。そういう虫が成虫になって産卵して生まれた幼虫が怖いです。薬に対して耐性を持つ可能性もあるからです。

5月の下旬頃には栗の花が咲きミツバチが沢山やってきます。花が終わって受粉が完了する頃になったら薬剤の種類を変えて次の防除を考えたいと思います。新たな害虫が表れているかもしれませんし・・・!